外資系製薬会社とは
外資系製薬会社と聞くと、いくつか具体的な会社名が思い浮かぶのではないでしょうか。
外資系の中でも大手の製薬会社は全世界に展開しており、研究開発費も桁違いです。外資系製薬会社の日本支社では日本で自社製品を売り込むための優秀な人材を求めています。
製薬会社というと医学的な知識が必要そうですが、職種によっては医薬系以外の大学出身でも問題ありません。中でもMR(医薬情報担当者)は文系出身の人も多いです。外資系製薬会社にはどんな職種があるのか、詳しく見ていきましょう。
参考:「外資系企業とは?特徴や日系との違いや向いてる人・合わない人を解説」
外資系製薬会社の仕事内容と特徴
外資系製薬会社では医療用医薬品、医療機器、日用品など幅広く手掛けています。
その中でもメインは医療用医薬品で、新薬や後発医薬品の開発に力を注いでいます。
日本にも製薬会社はありますが、外資系製薬会社は日本の製薬会社よりも規模が大きいのが特徴です。研究開発費をたくさんかけることができるので、新薬の開発にも力を入れています。M&Aも盛んに行われており、力を持った企業がさらに大きくなっていきます。
現在では生産部門でも営業部門でもITによる管理が欠かせません。日本の製薬会社はITに遅れを取っていることから、外資系製薬会社ではIT化で日本の企業と差をつけたいと考えています。そのため、転職の際もITに強いと有利です。
〇外資系製薬会社の企業例
- ノバルティス ファーマ株式会社: Novartis
- ファイザー株式会社: Pfizer
- グラクソ・スミスクライン株式会社: GSK
- MSD株式会社: MSD
- バイエル薬品株式会社: Bayer
- アッヴィ合同会社:AbbVie
- 日本イーライリリー株式会社:Eli Lilly
- サノフィ株式会社:Sanofi
- ノボノルディスクファーマ株式会社: Novo Nordisk
- ブリストル・マイヤーズ スクイブ株式会社:Bristol Myers Squibb
- ヤンセンファーマ株式会社:Janssen
外資系製薬会社の年収
日本の企業でも製薬会社は年収が高いイメージがあるかもしれません。事実、平均年収が1,000万円を超える企業もあります。 その理由としては、業界の特殊性が挙げられます。
新薬は誰にでも開発できるものではありません。しっかりとした学術的な裏付けを持って開発しなければならないので、専門知識が求められます。優秀な人材をキープするために、企業は高い報酬を支払います。別の理由としては市場規模の大きさが挙げられます。ひとつでもよく効く薬が開発できたら世界中で使われるので、利益率が高いのです。
昨今の新型コロナウイルスのワクチン開発の動向などを鑑みれば一目瞭然です。 外資系製薬会社は成果に応じたインセンティブの割合が多いことでも知られています。実力がある人はそれだけたくさんの収入を得ることができます。
役職による年収の目安はだいたい以下のとおりです。
- シニアスペシャリスト 700万~1,000万円
- マネージャー 900万~1,400万円
- ディレクター 1,400万~2,000万円
- ヴァイスプレジデント 2,000万円~4,000万円
外資系製薬会社の職種と必要なスキル
ここからは外資系製薬会社の職種と必要なスキルを見ていきましょう。
研究
製薬会社の中でも特に専門性が求められる部門です。生物学や薬理学の知識や経験を元に、どんな配合をすればいい薬ができるのか研究します。ひとつの新薬ができるまでに何十年もの研究が必要になることもあり、膨大な予算が注ぎ込まれます。すぐに成果が出なくても、長期的なビジョンを持って研究を続けていかなくてはなりません。地味な実験であってもコツコツ行う力が必要です。これまで数多くのノーベル賞受賞者たちが基礎研究の重要性を強調したことを思い起こせば納得できます。
開発
研究職が生み出した薬の臨床実験を行います。臨床実験で効果が認められたとしても、国の認可が下りるまでにはいくつもの関門があります。それをクリアするためのデータを集め、安全性を高めるのが開発部門の仕事です。細々とした書類作業もあるため、面倒な作業も厭わない姿勢が求められます。また、日本での認可を得るためには監督官庁との密なコミュニケーションが必要となるため、対人スキルやプレゼンテーション能力も問われるところです。
マーケティング
医薬に関する市場の動向を見極め、いかに自社の製品の売上を伸ばすか考える部門です。医薬品は特殊な分野のため、食品や日用品とは違ったアプローチが求められます。業界のことを考えて、常にアンテナを張りながら、医薬品に関する知識を無理なく理解できる素地があったほうが有利とも言えます。
営業(MR)
自社の医薬品を使ってもらうように、病院やクリニックを回って医療情報を提供するのが仕事です。自社の製品や医療業界のトレンドについて正しい知識を伝えなければなりません。文系出身者も多いと言われていますが、医薬についての知識は必須。勉強を続ける向上心や、自社製品の特徴を伝えるプレゼン能力が求められます。また、買い手は日本人の医師となるので、その心の琴線に訴えかけるようないわゆる日本的な営業スキルも求められます。
メディカル・サイエンス・リエゾン(MSL)
MRよりも一歩踏み込んだエビデンス構築や医学情報提供を行う職種です。MRは自社の製品を売り込むのが目的ですが、メディカルサイエンスリエゾンは医学的・科学的な動向を広く伝えるのが役目。すでに承認された医薬品だけでなく、開発品の製品についても詳しく説明することが求められます。業界全体に関心を持って勉強をして、自身の言葉で伝えるスキルが必要なので、医歯薬理工系出身者が有利とも言えます。
メディカルアフェアーズ
メディカルアフェアーズは自社製品の適正利用の推進をはかる部門です。以前はマーケティング部門の一部の学術情報担当として置かれていました。現在はマーケティング部門から独立することで、自社の製品に限らず、医療業界全体の知識を収集・提供する部門となっています。医療業界について興味を持ち、広く情報を集める探究心が必要です。また、製薬会社としての生命倫理的責任と義務を深く追及しそれを社内に啓蒙することが必要なため、より強い使命感と倫理観を持って取り組むことが求められる職制とも言えます。
外資系製薬会社で求められる人材像
外資系製薬会社にはさまざまな職種がありますが、共通して求められる人材像があります。
英語でスムーズにコミュニケーションが取れる人
外資系製薬会社では英語のコミュニケーションが必須です。日本支社で働いていると同じ職場に外国人がいないこともありますが、外国の社員と電話やメールでやり取りをすることは当たり前です。慣れないうちは大変ですが、とにかく現場で身につけていくしかありません。入社前から英語でスムーズなコミュニケーションが取れるレベルならかなり有利ではりますが、専門用語や社内用語については新たに習得する必要があります。
柔軟性のある人
医療業界はスピーディーに移り変わっていきます。製薬会社としても方針がどんどん変わっていくことがあるでしょう。そんなときも慌てず時流に合わせられる人は高く評価されます。ときにはトラブルが起こることがありますが、臨機応変に本国と日本の間に立ってバランス良く対応することが重要です。
特定の分野に詳しい人
医療分野ひとつとっても、病気や怪我の種類はたくさんあります。その中で特に詳しい分野がある人は重宝されるでしょう。医薬分野以外でも、ITに詳しい人や、マーケティングに詳しい人はその知識や素地を直接的に生かして活躍することができるかもしれません。
使命感を持って取り組める人
医薬品は人の生命に直結するものです。医学部や薬学部を出ていなくても、人の命を救う仕事に関われる点ではとても意義深いです。その一方で責任も重大です。医療に対して使命感を持ち、正しい知識を身につけていかなくてはなりません。医療についてまったく興味のない人には難しい仕事です。そもそも、自社製品の買い手が医師ということからも、「釈迦に説法」が大前提という中でクローズに繋げるためには、並々ならぬ勉強量が必要であることは明らかです。とはいえ、医師と同じく人の生命のため、日々努力できる人こそ製薬会社の社員に向いているでしょう。
外資系製薬会社への転職方法
外資系製薬会社に転職するには、転職サイトや転職エージェントを利用するのが近道です。その際、外資系に強いサイトやエージェントを選ぶのが大事。製薬会社にこだわらず、自分の持っているスキルを活かせるような外資系企業を探してみるとよいでしょう。
外資系製薬会社に転職するには、製薬会社やそれに近い業界からのほうが有利です。しかし、IT系や他業種の営業でも、製薬会社の求めている人材にマッチすることがあります。特に、外資系製薬会社が日本市場でのシェアを拡大させるためには日本人の力が絶対的に不可欠です。ですので、一箇所に絞るのではなく、希望に合いそうな企業に広くエントリーしてみましょう。
外資系製薬会社にも個性がある
製薬会社というとフラスコや試験管を持って実験する研究職が思い浮かびますが、それだけでなく営業職やマーケティング職などさまざまな役割を持った人たちがいます。会社ごとのカラーもまちまちなので、名前の知られた企業以外にも目を向けてみると、思いがけない優良企業が見つかるかもしれません。じっくり業界研究をしてみてください。
この記事を書いた人
F様
大学卒業後(法学士)約25年に渡り外資系航空会社、高等教育機関国際関係部門、ドローン(無人航空機)スタートアップ等でマーケティング・事業開発・セールス等に従事。現在はフリーランスとして多様な業界業種のビジネスコンサルティングを手掛ける。
事業戦略から実務まで幅広い守備範囲を有し、限界まで脳みそを絞って考え抜きクイックにアウトプットにつなげるスタイルが特徴。また、外資系企業・国際業務経験で育んだ国際感覚と英語力を駆使し、常にワールドワイドな視点からのコンサティングを提供している。