外資系メーカーとは
日常生活を見渡してみても、外資系メーカーが製造販売している商品は数多くあります。外資系メーカーと聞いて思い浮かぶ企業もたくさんあるのではないでしょうか。 外資系メーカーは日本のメーカーと比べて実力主義のイメージがあるかもしれません。事実、外資系企業では日本の企業と比べるとシビアな査定があります。厳しい現場に身をおいて自分の実力を試したいという人にはぴったりの職場です。外資系メーカーにはどんな業種や職種があるのか、その仕事内容や特徴を見ていきましょう。
参考:「外資系企業とは?特徴や日系との違いや向いてる人・合わない人を解説」
外資系メーカーの仕事内容と特徴
外資系メーカーとひとくちにいっても、取り扱う商品には大きな違いがあります。
外資系消費財メーカー
お菓子やシリアルなどの食料品、シャンプーや洗剤などの日用品を扱うメーカーです。日常生活に密着しているので、普段からよく見聞きするメーカーが多いでしょう。日本企業とのシェア争いが激しいため、マーケティング職や営業職はハードワークが強いられます。日本人の趣味や趣向、日本の小売販売店との関係構築など、日本人に則した思考や対応を前提として、本国製品をいかに日本で売って行くかということが使命となります。 市場規模が大きい分野では誰もが知る商品を手がけられるチャンスがある一方、責任も重大。大きな仕事がしたい人にはぴったりです。
〇外資系消費財メーカーの企業例
- P&Gジャパン合同会社: P&G Japan
- ユニリーバ・ジャパン: Unilever Japan
- 日本ロレアル株式会社: L’Oréal Japan
- ネスレ日本株式会社: Nestlé Japan
- ダノンジャパン株式会社: Danone Japan
- キンバリークラーク・ジャパン合同会社: Kimberly-Clark Japan
- レキットベンキーザージャパン株式会社: Reckitt Benckiser Japan
- ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社: Johnson & Johnson Japan
外資系ITメーカー
ITメーカーはソフトウェア、ハードウェア、Webサービスなどに細分化されます。いずれもインセンティブ給の割合が大きいのが特徴。好きな時間に出勤できるフレックス制を導入している企業が多いため、成果を出せば短時間労働も可能です。 自由度が高いため要領よく働ける人にはこの上なく快適な職場ですが、思うような成果が出せずに辞めていく人も多いようです。 また、本国の自由闊達な雰囲気と日本市場独特の商習慣の間で板挟みになることもしばしばあるので、柔軟な調整能力も必要です。
〇外資系ITメーカーの企業例
- Apple Japan合同会社: Apple Japan
- 日本マイクロソフト株式会社: Microsoft Japan
- インテル株式会社: Intel Japan
- 日本オラクル: Oracle Japan
- シスコシステムズ合同会社: Cisco Systems
- 日本IBM株式会社: IBM Japan
- 株式会社セールスフォース・ジャパン: Salesforce Japan
- アドビ株式会社: Adobe Japan
参考:「外資系IT企業とは?仕事内容や企業例・転職のポイントを解説」
外資系BtoBメーカー
個人向けではなく、法人向けの製品を販売するメーカーです。業務用の製品や、原材料を販売するメーカーが多く、一般的な知名度は低め。名の知られた外資系メーカーでバリバリ働きたいという人にはあまり向いていないかもしれません。日本企業相手の仕事がメインの外資系メーカーでは、雰囲気が日系企業と変わらないという声もありますが、年々本国から日本支社への直接関与の割合が高まっているため、そのあたりをうまく立ち回るバランス感覚が求められます。
〇外資系BtoBメーカーの企業例
- シュナイダーエレクトリック: Schneider Electric Japan
- 日本ハネウェル株式会社: Honeywell Japan
- ABB株式会社: ABB Japan
- GEジャパン株式会社: GE Japan
- デル・テクノロジーズ株式会社: Dell Technologies
- シーメンス株式会社: Siemens
外資系ラグジュアリーメーカー
高級ブランドのファッションアイテムや、高級車を取り扱うメーカーです。個人向けの仕事になるので、マーケティング分野ではプレスリリース作成や百貨店での催事の手配、VIP顧客の対応など、きめ細やかな日本人富裕層向けの対応が求められます。 外資系メーカーの中ではワークライフバランスが重視されていると言われており、メリハリをつけて働きたい人にぴったりです。
〇外資系ラグジュアリーメーカーの企業例
- プラダジャパン株式会社: Prada
- 株式会社ケリング ジャパン: Kering
- パルファン・クリスチャン・ディオール・ジャポン株式会社: Dior
- 株式会社モンクレールジャパン: Moncler
- ルイ・ヴィトン ジャパン株式会社: Louis Vuitton
- ロロ・ピアーナ ジャパン株式会社: Loro Piana
- リシュモンジャパン株式会社: Richemont
外資系メーカーの年収
外資系メーカーには基本給であるベース給と、成果に応じて増減するインセンティブ給があります。日本のメーカーは今でも年功序列なところが多いですが、外資系メーカーは実力主義のため、年齢に関係なく、実力のある人が昇進していきます。入社してまもなくはベース給が手厚く、ある程度ポジションが上がったら年俸制に変わる企業も少なくありません。 外資系メーカーの平均年収は600万円と言われていますが、インセンティブ給の割合が大きい職種では、人によって差があります。特に営業職は契約件数に応じて収入が変化するため、ある年は1,000万円を超えても、次の年は数百万円程度ということがありえるのです。 日系企業と比べて外資系企業は福利厚生があまりないと言われます。社会保険は日本の法律に従うため日本の企業と同じですが、退職金がまったくない企業もあります。とはいえ、企業によっては住宅補助が受けられたり、社員食堂が無料だったりというサービスも。中には自社商品が食べ放題という外資系メーカーもあるようです。
外資系メーカーの職種と必要なスキル
ここからは外資系メーカーの職種別に求められるスキルをみていきましょう。
マーケティング
外資系メーカーが自社商品を日本で販売するのに、どのようなカスタマイズが必要か、どうやったら売れるかといったマーケティング全般を担当します。マーケティングの成否が日本における成否を分けるので、責任重大です。本社との折衝も頻繁に行うので、高い英語力とコミュニケーション能力が求められるでしょう。日本市場全体を広く見渡し、自社製品の日本市場における将来性について見極める洞察力も必須です。
営業
心身ともにタフであることが求められる職種です。消費財ひとつとっても、高いシェアを誇る日系企業の商品と肩を並べるのは至難の業。マーケティング部門と連携を取りながら、どうやったら自社商品を取り扱ってもらえるのか知恵を絞り、適切にアピールするプレゼンテーション能力も必須です。また、実際に商品を購入してもらう企業や小売店は日系企業なので、日本独特のコミュニケーション(飲み会、接待、根回しなど)も無理なくこなす能力が求められます。
研究開発、技術職
外資系メーカーの製品はすでにできあがっていることが多く、日本向けにどのようにカスタマイズすべきかが焦点となります。海外と日本では法律が異なることも多いので、そもそも日本で販売できるのか、販売できるのならどこをアレンジしたら売上を伸ばせるか、といった調査・分析を行います。コツコツとした作業も多いことから、忍耐力や応用力といったスキルが重要です。また、日本における監督官庁との関係構築にも対応できるコミュニケーション能力やプレゼンテーション能力も必要です。
ファイナンス
予算管理や資金調達を行う部署です。ただ単に数字と向き合うだけでなく、社内の各部署と連携しながら利益を最大化する方法を考えます。適切に予算管理するためにも、各部署の要求を的確に汲み取るコミュニケーション能力や、大局を見渡す視野の広さが求められるでしょう。また、日系金融機関とのやりとりも多いので、日本の資金調達制度や財務手続きについても理解する必要があります。
人事
日系企業では人事部署が採用業務に大きく関わりますが、外資系企業では現場の管理職が採用権限を持っていることもあり、人事部署の権限はあまり大きくありません。社員のキャリアやスキル、希望に合った業務を割り当てたり、評価システムを構築したりといった縁の下の力持ち的な動きが求められます。ただし、業績悪化の折には日本支社社員リストラの矢面に立たされるので、ある意味「悪者」になる覚悟も必要です。
外資系メーカーで求められる人材像
外資系メーカーはアメリカ系とヨーロッパ系で社風が異なると言われています。アメリカ系ではバリバリ働くハードワークが多く、ヨーロッパ系ではワークライフバランスを重視したスタイルが多い傾向です。 ただ、アメリカ系でもヨーロッパ系でも優秀な人材を求めているのは間違いありません。具体的にはどのような人材でしょうか。
個人としての意見をうまく主張できる人
日系企業ではあまり個人の意見は求められませんが、外資系企業では個人の主張が重視されます。故に、基本的には自分の意見をアピールして、他の人よりも一歩抜きん出る意識を持つことが重要です。ただし、会社のカルチャーによりますが、そこで働く日本人上司や同僚についてはそうではない場合もあるので、その辺りの状況を見極めた上で、角が立たないように疑問や提案などをうまく主張する能力が求められます。本国から来ている外国人上司への対応と、日本人上司・同僚への対応について、最初のうちは意識して見極めることが必要です。
臨機応変な対応が取れる人
メーカーは現状に合った製品を出していかなければなりません。移り変わりが激しい世の中にあって、変わったことあったらすぐに対応できるような臨機応変さが求められます。
外国語でのコミュニケーション能力に長けた人
外資系企業でも日本支社では日本語を使う機会が多いかもしれませんが、英語は必須だと思っておきましょう。メーカーでは製品や業界に応じた専門用語も多く飛び交います。専門用語を交えてコミュニケーションを取れるよう、勉強が必要です。
外資系メーカーへの転職方法
外資系メーカーに転職するには、外資系企業に強い転職サイトや転職エージェントを利用するのが有効です。知人からの紹介という方法もありますが、待っているよりはどんどん動いたほうが良いでしょう。スキルによっては表に出ていない非公開求人のオファーが来ることも。これまでやってきた仕事をわかりやすくアピールすることで、転職に成功する可能性がぐっと上がります。
外資系メーカーで働きたい理由を考える
外資系メーカーの仕事内容や求められる人材像について説明してきました。外資系メーカーの中には外資系のイメージ通り完全実力主義の企業もあれば、日本の企業に近い雰囲気の企業もあります。日本にもすぐれたメーカーはたくさんあるので、なぜ外資系メーカーを目指すのか、外資系メーカーで何がしたいのか、その外資系メーカーの製品のどこが魅力なのか、それらを明確にしたうえで転職活動をするとよいでしょう。
この記事を書いた人
F様
大学卒業後(法学士)約25年に渡り外資系航空会社、高等教育機関国際関係部門、ドローン(無人航空機)スタートアップ等でマーケティング・事業開発・セールス等に従事。現在はフリーランスとして多様な業界業種のビジネスコンサルティングを手掛ける。
事業戦略から実務まで幅広い守備範囲を有し、限界まで脳みそを絞って考え抜きクイックにアウトプットにつなげるスタイルが特徴。また、外資系企業・国際業務経験で育んだ国際感覚と英語力を駆使し、常にワールドワイドな視点からのコンサティングを提供している。