外資系コンサルタントとは
外資系企業の中でも特に年収が高いイメージの外資系コンサルタント。コンサルタントと一口に言ってもその分野は戦略系コンサルティング、総合系コンサルティング、ITコンサルティング、財務会計コンサルティング、人事系、医療系、監査法人系、企業・事業再生系など多岐にわたっており、求められるスキルもさまざまです。外資系コンサルタントに転職したいという人は、どの分野で自分のスキルを活かせるか見極めると良いでしょう。
参考:「外資系企業とは?特徴や日系との違いや向いてる人・合わない人を解説」
外資系コンサルタントの仕事内容と役職
コンサルティングとは、課題を抱えたクライアント(企業・機関)に対し、課題解決のための支援を行うことです。コンサルティングを主に行っている会社をコンサルティングファームといいます。
コンサルタントの仕事は役職によって内容が異なります。役職の呼び名は会社によってさまざまですが、主に以下の4つのステップがあります。
アナリスト(アソシエイト、リサーチャー)
新人コンサルタントが就くポジション。先輩や上司のもとで、情報収集や分析を行います。Webリサーチや資料の作成など、ややもすれば地味な仕事が多いですが、コンサルタントの基礎を身につけるために重要な役職です。
コンサルタント(シニアアソシエイト、アソシエイト)
アナリストで数年の経験を積んだのちに昇進するポジション。マネージャーの指揮のもと、クライアントとの折衝を行うのが主な仕事です。プロジェクトで重要な役割を任されたり、アナリストへの指導を行ったりします。コンサルティングファームや類似する業界での経験がある中途採用者、もしくはMBA取得者はここからスタートすることもあります。
マネージャー(プロジェクトマネジャー、マネージコンサルタント)
アナリストやコンサルタントをまとめ、プロジェクト全体をディレクションする役割を持ちます。予算管理もマネージャーの仕事で、これまでのコンサルタント経験に基づいた幅広い知識が活かせる役職です。
パートナー(ディレクター、プリンシパル)
日本企業で「役員」と呼ばれるような役職で、コンサルティングファームにおける共同経営者としての役割を持ちます。新規クライアントの開拓も任されるので、営業能力も必要です。また、大手企業の役員と協働して経営課題の克服についてディスカッションし、方向性を見出すことが出来る能力が必要です。
外資系コンサルタントの年収
外資系コンサルタントの年収は役職ごとに変わってきます。ベース年収に加えて出来高による賞与もあるため、企業やポジションによって大きく異なるのが特徴です。だいたいの目安は以下のとおりです。
・アナリスト 500万円~800万円
・コンサルタント 800万円~1,500万円
・マネージャー 1,500万円~2,000万円
・パートナー 3,000万円~
外資系コンサルタントの分野と必要なスキル
ここからは外資系コンサルタントの主な分野と、求められるスキルを見ていきましょう。
戦略系コンサルティングファーム
企業の経営課題を解決するための戦略を立てるのが戦略系コンサルティングの仕事。会社全体の課題解決へのサポートをはじめ、新しい市場への参入や成長戦略、M&A戦略、海外進出戦略など幅広いコンサルティングを行います。
的確なコンサルティングのためには現場を知り、徹底的に課題を洗い出すことが重要。頭脳だけでなく体力も求められます。
〇外資戦略系コンサルティングの企業例
- マッキンゼー・アンド・カンパニー: McKinsey & Company
- ボストンコンサルティンググループ: BCG
- ベイン・アンド・カンパニー: Bain & Company
- A.T.カーニー: A.T. Kearney
- アーサー・ディー・リトル: ADL
- PwCコンサルティング(Strategy&): Strategy&
- ローランドベルガー: Roland Berger
- アクセンチュア(戦略): Accenture Strategy
総合系コンサルティングファーム
クライアントの業種を問わず、ありとあらゆる企業の課題を解決に導く大規模なコンサルティングファームです。課題解決や戦略策定だけにとどまらず、新たなシステム導入に関わることもあります。
必然的にプロジェクト規模が大きくなるため、コンサルタントとしても総合的な知識や考え方が求められます。高いコミュニケーション能力や調整能力も必須です。
〇外資総合系コンサルティングの企業例
- アクセンチュア: Accenture
- デロイトトーマツコンサルティング: Deloitte
- PwCコンサルティング: PwC
- 日本IBM: 日本IBM
- KPMGコンサルティング: KPMG
- EYストラテジー・アンド・コンサルティング: EY
IT系コンサルティングファーム
ITを活用して企業の課題解決を図るのがITコンサルティングです。クライアントのIT戦略を組み立て、システムの開発や最適化を行います。
ITコンサルタントはクライアントが何に困っているのか、ITを使えばどう解決できるのか、正確に把握しなくてはなりません。SEほどではなくても、システム開発に関する知識は必須です。実際にシステムを構築した経験があれば、きめ細かい提案ができるでしょう。
〇外資IT系コンサルティングの企業例
人事コンサルティングファーム
企業組織における人事に特化したコンサルティングを行います。人材の採用から教育・研修といった能力開発、福利厚生や給与制度など、幅広い範囲を手掛けます。
人事の良し悪しは組織の将来を左右することもある、重要なポイントです。単に人事の問題と考えるのではなく、組織全体を意識した幅広い視野が求められます。
〇外資人事コンサルティングの企業例
- マーサー ジャパン: Mercer Careers
- エーオンジャパン: Aon
- ウィリス・タワーズワトソン: Willis Towers Watson
- コーンフェリー・ジャパン: Korn Ferry
財務・会計コンサルティングファーム
財務や会計に特化したコンサルティングが特徴。M&Aに関するアドバイスや、資金調達、投資戦略についても担当します。
公認会計士や税理士などの資格や、関連した業務経験があると有利です。資格がなくても、財務や会計についての知識は必須です。
〇外資財務・会計コンサルティングの企業例
医療コンサルティングファーム
病院やクリニック、介護施設など医療分野でのコンサルティングを行います。医療機関における戦略の策定や、施設の建て替え、設備投資、システム導入などの計画をサポート。医療分野に特化した総合コンサルティングともいえます。
医療業界での経験や医療系の資格があれば多少は有利に働くかもしれませんが、必須というわけではありません。
〇外資医療コンサルティングの企業例
- KPMGヘルスケアジャパン:KPMGヘルスケアジャパン
- グローバルヘルスコンサルティング・ジャパン:グローバルヘルスコンサルティング
監査法人系
先述の財務・会計コンサルティングだけではなく、経営コンサルティング、ITコンサルティング、TOB、M&A、など非監査業務も幅広く行っているコンサルティングファームで、母体は監査法人系となります。
母体となる監査法人の財務・会計系的ノウハウを活かしながらも、様々な分野を偏りなく扱うことができるバランス感覚を活かすことができます。
〇外資監査法人系コンサルティングの企業例
- 有限責任監査法人トーマツ:Deloitteトーマツ
- PwCあらた有限責任監査法人:PwC Japan有限責任監査法人
- EY新日本有限責任監査法人:EY
- 有限責任あずさ監査法人:KPMGジャパン
企業・事業再生系ファーム
事業再生、経営立て直しを図るため、あたかもその企業の一員として内部に深く入り込むことが特徴的です。時には経営権を公式に取得して参画する場合もあります。
コンサルタントという立ち位置からさらに一歩深くクライアントに入り込むような、セールスパーソン的な存在感が求められます。
〇外資企業・事業再生系コンサルティングの企業例
- アリックスパートナーズ:AlixPartners
外資系コンサルタントで求められる人材像
クライアントはコンサルティングで課題が解決することを望んでいます。コンサルタントはクライアントに対して課題解決に向けた方法を提案していかなければなりません。ここで求められるのは、高いコミュニケーション能力を持ち、ロジカルシンキングができ、高いストレス耐性を持つ人材です。
高いコミュニケーション能力
クライアントの現状を把握し、的確な解決方法を提案するためには、きめ細かいコミュニケーションが求められます。クライアントがAという課題について相談してきたものの、実はBに問題がある、ということは少なくありません。クライアントとの会話から課題の本質を見極めるためにも、高いコミュニケーション能力が必要です。
また、コンサルティングを行う上でのチームワークも求められます。上司や先輩、同僚とも円滑なコミュニケーションを取るのが重要です。
ロジカルシンキング
コンサルタントは論理的に解決方法を探る必要があります。クライアントに解決方法を提案するときも、「なんとなく」では説得力がありません。どうしてその考えに至ったのか、論理的に説明することが求められます。
高いストレス耐性
どの職業でも少なからず人はストレスを感じることがありますが、特に外資系コンサルティングファームは非常にシビアな世界であり、あり得ない位の短期間で無理難題を解決に導くことが求められるケースも多々あります。そのような高負荷がかかる状況下においても、プロ意識と冷静さを保ちながら職務を遂行することが出来る能力が求められます。
外資系コンサルタントへの転職に役立つ資格
外資系コンサルタントへの転職に、資格を保有していることは必須条件ではありません。
ただ、外資系コンサルタントへ転職する上で役立つ資格を一部ご紹介します。
- MBA(Master of Business Administration)
- 経営学修士号であるMBAで、経営戦略や組織開発など、幅広い分野のコンサルタントに役立ちます。
- CFA(Chartered Financial Analyst)
- ファイナンス分野におけるグローバルな専門知識と技能を証明する資格で、投資銀行や資産運用などのファイナンス関連のコンサルティングに役立ちます。
- PMP(Project Management Professional)
- プロジェクト管理の専門知識とスキルを証明する資格で、プロジェクトマネジメントやプロジェクトコンサルティングに役立ちます。
- CBAP(Certified Business Analysis Professional)
- ビジネスアナリストの専門知識とスキルを証明する資格で、ビジネスプロセスの分析や要件定義などを含むコンサルティングに役立ちます。
- CISA(Certified Information Systems Auditor)
- ITシステムの監査と制御に関する知識とスキルを証明する資格で、IT監査やITガバナンスに関するコンサルティングに役立ちます。
未経験から外資系コンサルタントになるには
外資系コンサルタントでは未経験者も採用しています。そうはいっても狭き門であることは間違いなく、20代~30代の若い人、高学歴な人、前職で一定の成果を残している人が有利です。会計コンサルティングなら公認会計士や税理士、人事系コンサルティングなら社会保険労務士といった資格もアピール要素になりますが、必須ではありません。
選考のポイントとなるのが、前述したコミュニケーション能力とロジカルシンキング、そして高いストレス耐性です。特に外資系コンサルタントの採用面接では「フェルミ推定」や「ケース面接」、そして「ストレス耐性を試す面接」が有名です。
フェルミ推定とは「東京都に自動販売機は何台あるか」「たった今、日本でテレビを見ている人は何人いるか」といった、すぐには答えが出せないような問題です。ケース面接では、そこからさらに踏み込んで、「東京都での自動販売機の売上を2倍にするにはどうしたらいいか」「ある番組の視聴率を2倍にするにはどうしたらいいか」と問います。
ストレス耐性を試す面接では、面接官はあなたが考える間もなく矢継ぎ早に質問を連発し、少しでも回答が滞ると煽ってきたり、蔑んだり、溜息をついたりします。
いずれの問題にも、正確な答えはありません。面接官とコミュニケーションを取りながら論理的な思考をどのような状況下においても冷静に行うことで、コンサルタントとしてのポテンシャルをチェックされます。
外資系コンサルタントへの転職は幅広い視野を持って
コンサルタントの仕事内容や求められる人材像について説明しました。人気のある業界ですが、取り扱う分野はさまざまです。特定の分野にこだわらず、幅広い視野を持って転職活動を行うのがよいでしょう。すでに持っているスキルを活かしつつ、キャリアアップができる会社を選びたいですね。
この記事を書いた人
F様
大学卒業後(法学士)約25年に渡り外資系航空会社、高等教育機関国際関係部門、ドローン(無人航空機)スタートアップ等でマーケティング・事業開発・セールス等に従事。現在はフリーランスとして多様な業界業種のビジネスコンサルティングを手掛ける。
事業戦略から実務まで幅広い守備範囲を有し、限界まで脳みそを絞って考え抜きクイックにアウトプットにつなげるスタイルが特徴。また、外資系企業・国際業務経験で育んだ国際感覚と英語力を駆使し、常にワールドワイドな視点からのコンサティングを提供している。